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StarTrek in Another World

 スタートレックには世界中にファンがいます。

 アメリカにはスタートレックがある,日本にはようやくガンダムが現れた,と私はよく言うのですが,先進国の向かう先には,大人も子供も夢中になるSF作品があるんじゃないかと,そんな風に思ったりします。そしてそれぞれに共通するのは,宇宙と未来とメカと,そして分厚い人間ドラマです。

 ガンダムと同じように,スタートレックもいくつものテレビシリーズが作られ,映画も公開されてきました。しかし,いずれも非常にマニアックで,ファン以外お断りが不文律になっているような気さえします。

 1つの大きな世界観があり,そこに緻密な設定が存在,すべての作品において矛盾が許されず,整合性を強く求められるのは,ある意味でガンダムと同じく国民的SFの宿命といえるかも知れませんが,その整合性が完璧であるほど,マニアや歓喜し,一般人は遠のいていくものです。

 さて,そこでシリーズ最新作の「スター・トレック」です。

 アメリカでは大ヒット,日本でもまさかのヒットを記録した今年の夏の映画でした。スタートレックでも,カークやスポックが出てくる作品は,国内では「宇宙大作戦」としてタイトルが付けられるのですが,本作品は「スター・トレック」とそのままです。

 本当なら映画館で見たかった私ですが,結局引き籠もってしまい,見る事が出来ませんでした。Blu-rayで出ることを心待ちにしていたのですが,それがようやく先日発売になり,今頃になって皆さんに追いついたというわけです。

 このお話,時代的にはTOS(The Original Series,要するに最初のスタートレック)の少し前,カークやスポックが若者であった頃を描いています。しかし,これが直接TOSに続くのかというとそういうわけではなく,別次元の物語として描くことでTOSに続く物語という役割から上手に逃れ,小さな矛盾や整合性の取れていない設定に対するマニアからの批判をうまくかわすことに成功しています。

 のみならず,マニアの視線におびえることなく,面白い事を遠慮せずにやっていこうという非常に前向きな力も加わって,自由にのびのびやってるなあという印象さえ感じます。

 スポックが感情をむき出しにカークを殴るシーンもおかしければ,マッコイが離婚して仕事を失ったから艦隊に入るという負け組根性丸出しなのもどうかと思います。チェコフが最初からいる(しかもかなりきもい)のも変だし,あの凄腕のスコットランド人エンジニアのスコッティが辺境に飛ばされているというのもおかしいでしょう。ちょっと仕草とかそっくりなので笑ってしまいますが・・・それに,カークとスポックでウフーラを取り合うのはいかがなものかと。よくあるバンドの解散の理由はバンド内恋愛であることを彼らは知らないのか!(そんなもの知りません)

 一番ひどいのはカークで,謹慎中に無断でエンタープライズに乗り込み,正式な辞令も無しに無茶な行動を起こし,何度も死にそうになりながら,最終的には大成功,表彰されて昇格するなんて,宇宙艦隊には規則はないんですか?

 そんな,バントのサインを無視して手当たり次第にバットを振り回したら,天性の才能に目覚めて外野に痛烈なゴロ,1塁で止まる気などさらさらなく躊躇せずに2塁を蹴り,3塁コーチが止まれというのにこれまた根拠のない直感だけでホームに突っ込み,砂煙が消えたらホームに指先1つで触れていて逆転満塁ランニングホームランにしちゃうような,そんでもってMVPまで持って行っちゃうような,そんな面倒臭いわがままな人がいきなり艦長になるなんて,私がクルーなら即刻船を下ります。命がいくつあっても足りません。

 なんか,傷物を集めてっていうあたり,なんか日本のスポーツマンガの典型のような気がするし,知恵と勇気と団結でどんな困難も乗り越える!みたいな流れになってしまいそうな気がして,ちょっと怖い気がします。かりにも人類の英知を結集した宇宙艦隊の旗艦エンタープライズですからね,愚連隊に任せるわけにはいかんのです。

 でも,いいんです。これは別次元のお話なのです。もはやなんでもありなのです。(だからといって好き放題しないところが,監督の腕の見せ所でもあります)

 そもそも娯楽至上主義のハリウッド映画で,監督自らも「マニアに向けて作ったわけではない」と公言してはばからないくらいですから,うるさいマニアがあきれて口をあんぐり開けている姿を期待しているんでしょうね。その分,何の知識もない人が,実に楽しく見る事の出来る映画になっています。スタートレックが理由も理屈もいらない映画になるなんて,私はちょっと驚いているくらいです。

 この映画の見所は,個人的にはテンポの良さと粋の良さ。はつらつとした若者が怖いモノ知らずで暴れ回る姿は実に爽快です。

 そしてキャストがまた素晴らしいです。カークのような生まれ持った直感の鋭いアウトローを描くと,どうしてもやんちゃなだけで終わってしまうのですが,思慮深さやリーダーシップ,そして時折見せる影の部分を見事に表現しています。

 スポックもそうです。ずばり,このスポックは男前の好青年です。おそらく,この映画でもっとも良い役者だったといえると思います。

 ウフーラもオリジナルをはるかに超越した美人で,もはやこれは反則です。

 カーデシア人の悪役ネロの演技も見事です。カーデシア人はTOSの世界ではTNGやDS9とは違った描き方をされていますが,TOSでの表現に比較的忠実で,実に陰鬱なイメージで描かれています。そもそもカーデシア人は遮蔽装置を持っていたり,小型のブラックホールを手なずけてエネルギー源にしているほどですから,ある意味最強の連中ですが,それがなぜ無鉄砲な地球人のカークに負けるのか,光と影によって表現された雰囲気が,それを説明しているかのようです。いやはや,Blu-ray万歳。

 キャストがみんな,まるで本当のクルーのように,仲良く結束して楽しく映画を作っていて,肩の力の抜け具合もよい塩梅で,スタートレックという大作に気負うことなく,自然に取り組んでいる姿が非常に好印象です。

 これだけヒットすれば,続編が出るのは間違いないんじゃないかと思っていますし,すでに家族や兄弟のような親しさで繋がったキャストの,強い結束感に基づく演技をもう一度みてみたいものだと思います。クルーの強い結束と信頼,これがスタートレック全シリーズに共通する背骨だと私は思うからです。

 外伝といいますか,スピンアウト作品といいますか,アナザーストーリといいますか,そんな雰囲気で,特に熱烈なトレッキーでもない人が,純粋に良質の娯楽を目指して作ったスタートレックは,鑑賞中のマニア的視点の維持も必要なく,作る方も見る方も楽しむ事に集中できる,大変に面白い作品でした。

安価な地デジブースターを考えてみる

 PCでテレビを見ることも板に付いてきた今日この頃ですが,多摩川沿いに住む私としては神奈川県の住民にもかかわらず,テレビ神奈川が安定しないという問題点にいまいちすっきりしていません。

 地方UHF局(テレビ放送からVHFが廃止された暁にはこの表現はどうなるのでしょうね)にそんなに躍起になるのもどうかと思うのですが,なにげにテレビ神奈川は面白い番組をやっているので,実は気に入っています。

 例えば「岡崎五郎のクルマでいこう」は全国枠でないのが惜しい良い番組だと思いますし,「天体戦士サンレッド」も楽しみにしています。実家にいた頃はずっと見ていた「探偵ナイトスクープ」もテレビ神奈川で放送されています。

 そんなわけで民放では最も見ているテレビ神奈川ですが,私の環境では少し受信レベルが低く,アンテナブースタなしではドロップがひどくて,満足に見ることが出来ません。

 そこで半信半疑で導入したのが,YAGIのDPW02というアンテナブースタです。ゲインは低く,その代わりノイズも小さいという「もうちょっと足りない」という用途に向けたアンテナブースタだそうですが,私が購入した6月時点のamazonの価格が約4300円とリーズナブルなわりに,私の環境では劇的な改善が見られました。

 ただ,安定受信ギリギリのところのようで,天候が悪いときなど,一瞬ですがドロップが起きているような感じです。別に実害もないのでほっときゃいいんですが,夜も眠れないくらい気になるのはやはり性格の問題でしょうか。

 アンテナブースタにもうちょっとゲインがあったら違うかも,そんな素人的な考えが浮かんで,少しamazonを散策してみました。すると,以前は見つからなかったユニデンのRB30Uというアンテナブースタが,非常に安価に出ているではありませんか。

 約3200円という値段ですが,ゲインは標準で30dB,NFは3.0dB以下というスペックです。ゲインは連続可変出来るようになっているので,安い割には使い道が広そうです。

 一方で私が今使っているDPW02ですが,ゲインは12から15dB,NFは2.0dB以下とローノイズが光るスペックです。価格は当時は4300円ですが,現在は3600円くらいまで値下がりしているようです。うむー。

 ノイズの差というのは実は結構大きいことが後々わかるわけですが,ゲインがこれだけ違ってくると,受信安定性も多少は良くなるんじゃないかと思いました。これも後々誤りであることがはっきりとします。

 そもそも,アンテナブースタというのは,テレビの手前に置いて使うものではなく,アンテナの直下に置いて,ケーブルや分配機による損失をカバーするために入れる一種のバッファと考えるべきものです。弱った電波を増幅する機能は確かにありますが,テレビの受信には電波の強さだけが重要なのではなく,ノイズの少なさ,平たく言うと電波の質こそ重要です。

 私のようなアパートでは,各部屋に分配するロスを補うためすでにブースタが入っているはずで,そこから何十メートルも同軸ケーブルで引き延ばされた後の電波を,室内のブースタで再び増幅したところで,一緒にノイズも増幅することになってしまい,電波そのものは強くなっても電波の質は改善しません。

 このあたり,なかなか直感的にモヤモヤするのですが,自分自身へのまとめとして書いておきます。同じくモヤモヤしている方は,辛抱して読んでスッキリしてください。

 まず,SN比についてです。信号とノイズの比率として馴染みのある数字ですが,通信分野ではSをキャリアの強さとしてCN比,もしくはCSNと書くことも多いようです。

 SN比は電力比で示され,信号レベルをS,ノイズレベルをNとした場合,

SN = 10*log(S/N) (dB)

 となります。ま,これはいいですね。

 次に雑音指数NFです。NFはある系における,入力と出力のSNの比を示します。つまり,その系を通ることで増える(もしくは減る)雑音がどれくらいあるのかを示すわけですね。入力の信号レベルをSin,ノイズレベルをNin,出力の信号レベルをSout,ノイズレベルをNoutとすると,

NF = (Sin/Nin) / (Sout/Nout)
= (Sin*Nout) / (Sout*Nin)

 となります。もちろん,それぞれの入力は電力です。

 もし,ある系が発生させるノイズがゼロだったとすると,ノイズの量は増えも減りもしませんから,入力と出力のSNが変化しない,つまりNF=1(=0dB)となります。

 さて,アンテナブースタ,同軸ケーブルや分配器など,チューナーまでのトータルのNFを考えてみます。なぜなら,結局のところ電波の品質,すなわち受信レベルというのは,系全体のNFが低いほどよいことになるからです。

 今,直列に繋がっている機器のそれぞれのゲインをG1,G2...とし,それぞれのNFをF1,F2...とします。全体のNFをFTとすれば,

FT = F1 + ((F2-1)/G1) + ((F3-1)/(G1*G2)) + ((F4-1)/(G1*G2*G3)) + ...
+ ((Fn-1)/(G1*G2*...G(n-1)))

 となります。(各値はdBではなく真数です)

 これを見て分かるように,NFに対する個々の機器のゲインの影響は後段になるほど小さくなります。また,初段のNFとゲインがもっとも系全体のNFに影響を与えることもわかります。

 ということはですね,同軸ケーブルのようにゲインは1以下,ノイズは増えるという装置を初段に置いてしまうと,後段でいくら高性能なブースタを入れてもほとんど効果がない,ということになるわけです。

 逆に,初段にブースタをいれてしまえば,後段に分配器や同軸ケーブルを入れても,あまり影響を受けなくなります。同軸ケーブルの長さを無視できる,分配する数を気にしなくてよい,というのが,アンテナブースタの本来の役割であることがおわかり頂けるでしょう。

 参考までに,いくつかのデータを紹介しましょう。

 まず,パッシブな機器のゲインとNFに対する考え方ですが,例えば分配器は2分配の場合に,4.0dBほどの損失があります。1つのエネルギーを2つにわけるのですから,損失が3.0dB以下つまり半分以下になることがないのは,ごく当たり前の話ですね。

 それで,この分配器のゲインはというと,-4.0dBとなります。ではNFはどうかというと,これは4.0dBとなります。結構なノイズ源になっていますね。

 同じように同軸ケーブルはどうかというと,BS用の5Cタイプ(直径5mmの太いやつですね)で,10mあたり約2dBの損失があります。安いケーブルは損失が大きく,高いケーブルは損失が小さいので,長く引き延ばすなら高価なケーブルを使わないとダメだとわかります。

 もし20mも伸ばすと,そのゲインは-4.0dBとなり,NFは4.0dBまで悪化します。これはなかなか強烈です。

 チューナーにも損失があります。空から飛んでくる電波のエネルギーを消費して信号を得ているわけですから,これも当たり前の話です。いわゆるゲルマラジオってやつは電池がいらないラジオですが,これは電波のエネルギーだけで音まで鳴らしてしまうゆえ,音も小さく感度も低いわけです。

 そのチューナーですが,損失は通常5.5dBと言われています。

 ここで分かるのですが,各部屋に分配されたその先で,複数のテレビやDVDレコーダを繋いで電波が弱った時に,各部屋でブースタを用いると効果がある場合があります。

 もちろん,チューナーの手前にブースタが入っていてもあまり効果がない,というセオリーが変わるわけではありませんが,それでも複数のチューナーを接続して電波が減衰してしまうような状況だと,室内のブースタでもそれを補う役割くらいは期待できるということです。

 さて,2分配器を入れ,同軸ケーブルを20m伸ばした先にチューナーを1つ繋げたケースで,トータルのNFをこれらの数字を使い,ちょっと計算してみると,さっと21.88となります。13.4dBというところでしょうか。

 ここでゲイン30dB,NFが3.0dBのブースタを用意します。最初にアンテナ直下にブースタをいれて,そこから2分配器と同軸ケーブルを経た場合のNFは,ざっと2.02です。ブースタのNFが3.0dB,つまり約2ですので,2分配しても20m伸ばしても,ほとんど悪化していないことがわかります。これはすごい。

 次に2分配器から20mの同軸ケーブルを経て,チューナーの手前でようやくブースタを入れた場合を計算します。すると12.52となります。ブースタなしより幾分良くなっていますが,やはりアンテナの直下が一番良いというのがよくわかります。

 では,今度はブースタをローゲイン・ローノイズのものに変えてみましょう。ゲインは12dB,NFは1.5dBとします。ゲインは先程のブースタの1000倍に対し,16倍まで低くなっています。これだけ低いとさすがに芳しくない結果が出るかと・・・

 まず,アンテナ直下に入れてみます。先程と同様に計算すると,2.70となります。このブースタのNFは1.5dB,つまり約1.4ですのでゲインが低い分,かなり悪化しているのがわかります。16倍程度のゲインだと,2分配とケーブルの損失を補うのは,けっこう重たい仕事だということになりますね。

 次に,このブースタをチューナーの手前に入れてみます。先程同様計算すると,9.73となります。

 比べてみましょう。

 ブースタの種類 アンテナ直下 チューナー手前
-------------------------------------------------
 ブースタなし    21.88     -
 ハイゲイン     2.02     12.52
 ローゲイン     2.70     9.73

 ハイゲインのブースタの場合,アンテナ直下で効果てきめん,です。ローゲインのブースタではゲインが小さく,後段のロスを補いきれないようです。

 しかしチューナーの手前に入れた場合逆転します。ローゲインはノイズの小ささを武器に,ハイゲインよりもいい値を出してきます。

 つまり,今回のケースでは,アンテナ直下に入れるならゲインが高い方がよく,チューナーの手前にいれるならゲインよりもノイズの小ささが重要だ,と言うことになります。いやー,面白いですね。

 で,この結果ですが,私の実験でも同じような傾向になりました。

 アンテナブースタを,現在使っているローゲイン・ローノイズであるDPW02から,ハイゲインのRB30Uに交換し,受信レベルが最も高くなるようにゲイン調整つまみを調整して比べたところ,若干ですがRB30Uの方が受信レベルが下がりました。ほんのわずかですし,どちらのブースタでもドロップなど発生しなかったのですが,値が揺らぐ際の中心値が少しだけRB30Uの方が低い傾向を示しました。

 またRB30Uのゲインを最大(つまり30dB)にすると受信レベルが低下し,映像が出なくなってしまいました。かといって最小(つまり10dB)にすると,これもまた受信レベルが低下して,映像が出なくなりました。ゲインを最大にした場合の受信レベル低下の原因が,チューナーへの過大入力によるものなのか,それともトータルのNF悪化によるものなのかは,信号レベルの測定を行っていない(測定したいなあ)ので,今回の検討だけではちょっとわかりません。

 受信レベルが最大になる時のゲインについても,実測する手段がなかったのですが,DPW02と同じゲインになっていると仮定した場合,結果として受信レベルがやや低くなったという傾向から考えると,ノイズが多いか少ないかが決め手になっているんじゃないかと推測できます。

 計算した値そのものにあまり自信はありませんが,結果は式の意味自体は反映していると思います。ゲインやNFなどの指標が,アンテナブースタを適材適所に用いるために不可欠な情報であるという事を,今さらながらに知りました。

 しかし,RB30Uが1つあれば,アンテナ直下でもチューナの手前でも,ゲイン調整つまみをうまく使えば,どちらでも実用上問題のない程度に利用出来る,ということもまた事実ですので,今から買うならRB30Uをおすすめしておこうと思います。安いですし。

 さてさて,私の環境ではDPW02の方が僅差で良い結果になったわけですが,そうするとRB30Uが余ってしまいます。これは年末年始に,実家の地デジアンテナ大作戦のために取っておくことにします。

 実家の地デジ化は,難視聴対策による共聴システムが地デジに対応しておらず,対策の予定も未定であるため,室内アンテナによる不安定な状態で暫定的に行ってあります。

 室内アンテナですから,部屋を閉め切ることが多く,雨や雪などで天候が不順になりがちな冬には厳しいと思うのですが,難視聴対策のための共聴システムの地デジ対応は全国的にもようやく問題提起がなされたばかりと,遅れている分野です。

 役所をあてにしていてはせっかくの地デジテレビがもったいない。待っていても結局自前でアンテナを用意しろと言われる可能性もなくはないので,もう自分でやっちゃいます。

 ただ,今の私の鈍くささで実家の屋根の上に登れば,間違いなく命を落とすでしょうから,ベランダ設置タイプのアンテナを利用する予定で,少し前に新発売となったDXアンテナのUAH800を手配しました。

 これは通常の八木アンテナの20素子相当の性能を持つ平面アンテナで,この種のものとしては際立った性能を持っています。もう八木アンテナなどは,価格の安さを除いてはメリットなどないんじゃないかと思うほどです。

 これを2階のベランダに取り付け,恒久対応としようと考えています。

 しかし,従来の共聴システムと入れ替えてしまうと,アナログ放送がみれなくなってしまいますので,これを生かさねばなりません。実家の配線の状態がよく分からないので今は結論を出せませんが,今は取り外して使っていないCSアンテナ用の配線がベランダに残っているはずで,これでとにかく室内まで引っ張り込み,ここにアンテナブースタを入れてから,地デジテレビが設置された部屋まで引っ張ろうと思います。

 しかし,ベランダとは言え,真冬の作業は寒いだろうなあ。風呂場の天井裏にある分配器やブースタに手を出すのも嫌だなあ。

地デジPCその後

 地上デジタルテレビへの移行をPCベースで行ったのが6月ですから,もう4ヶ月ほど経過しています。大容量1TBで無尽蔵に録画可能,ダブルチューナーで裏番組もしっかりサポート,xxxがyyyしてzzzなので@@@という点も素晴らしく,残しておきたい番組はMacのturbo264HDでH.264にして保存しています。

 今のところ番組を取り逃したことは少なく,その点では信頼性も低いわけではありませんが,時に復帰に失敗していることがあり,完全に任せられないなあと言う気分があるのもまた事実です。

 当初復帰の速さと仕組みの簡単さからスタンバイを使っていましたが,これだと1週間に一度くらい復帰に失敗します。考えてみると2GBもDRAMがあるんですから,そのうち1bitくらいころっと化けてもおかしくないわけで,それがスタンバイ前の内部状態と食い違っていたら即暴走です。実に危ういです。

 ということで,サスペンドを使う事にしました。仕組みが複雑ですし,デバイスやドライバがちゃんと対応しないと不安定になりますが,休止前の状況をHDDに残す方法であり,復帰時にはすべてのデバイスが一度リセットされる点でも,信頼性としてはこちらが上のように思います。

 結果,復帰失敗は1ヶ月に一度くらいの割合に減りましたが,それでも起きてしまった事実は消えません。

 そこでさらに,復帰後再起動をかける設定を行いました。復帰はあくまで再起動を行うためのトリガに過ぎず,録画はあくまで再起動後の綺麗な体で行うわけです。

 今のところこの方法で問題は出ていません。

 それでも心配なのは確かです。かといって電源を入れっぱなしにするのは,機器の寿命の問題もあるし,それに停電があったら完全にアウトですので出来ませんしね。

 そう考えると,PCではなく,ちゃんと信頼性のある専用機を買うのが筋なのかも知れません。データの融通性の高さをとるか,信頼性を取るか,難しいところです。

 もう1つ心配なのは,故障や破損です。

 汎用品ばかりですので,壊れたら買い直せばいいだけのことですが,問題はチューナーです。xxxをyyyするのに,特殊なチューナーが必要なわけですが,現在私のつ買っている製品は対策が行われており,xxxをyyy出来なくなっています。

 「けいあん!」でその筋に知られるメーカーの製品が,今やxxxをyyy出来るチューナーになっているのですが,私は一応予備機としてこれを9月に1台だけ購入してあります。xxxをyyy出来る事も確認済みです。

 こうして考えてみると,家電品の値段と今回PCを用意するのにかかったお金とを,単純に金額だけで比較して損得を云々するのは間違っているなあと思ったりします。やっぱ信頼性という点で,専用機にはかないませんね。

どんな本を持っているかを把握する楽しみ

 以前書いたかも知れませんが,MacOSXには,Booksというフリーソフトがあります。名前の通り蔵書管理のソフトです。蔵書管理など面倒なことこの上ないのですが,人間誰でも記憶力は落ちますし,一方で長く生きていれば当然所有物も増えるわけで,両方の限界点から私はこの年齢で蔵書管理の有用性を感じた,ということでしょうか。

 特に私は,実家と自宅に分けてあること,一部はPDFになっていて実体が廃棄済みだったりするので,持っているかどうかではなく,どこにどんな状態であるのか,を覚えておかねばなりませんが,これはなかなか大変なことです。

 BooksはISBNコードをiSightで取り込み,amazonにアクセスして書名や表紙の写真などを引っ張ってきてくれる便利なソフトです。それでもドイツ製ということでちょっと馴染まないUIがあったりして,手放しに満点を上げるソフトとは言えません。

 原則雑誌は登録しない,手に入れたらその日のうちに登録,場所と状態を正確に記録することなどを運用規則として決めてから登録を初めて約7ヶ月,ようやく登録が終わりました。

 全部で1369冊のエントリとなりました。もっと多いかと思いましたが,こんな程度なんですね。もっとも雑誌も入れれば2000冊くらいになりそうです。

 手元にある本は新しい本が中心ですし,冊数も400冊くらいですから比較的簡単に登録が終わったのですが,実家にある本が難航しました。実家に屋根裏にある倉庫に段ボールにいれてある本を1冊1冊取り出し,ISBNコードをデジカメで撮影します。(というのも実家にはまともなMacがないからです)

 ISBNコードがない古い本や,雑誌の別冊などは書名などのデータを記録するため,奥付を撮影します。また,ISBNコードの有無にかかわらず表紙の写真も撮影しておきます。(というのも実家にはスキャナがないからです)

 撮影したISBNコードの画像ファイルを直接Booksに流し込めればいいのですが,どうもそんなことは無理なようで,1つ1つ自分でコードを読み取って,テキストデータにします。このテキストをコピペしてBooksに打ち込み,amazonにアクセスします。

 ところが古い本はamazonにあるはずもなく,結局書名を手で打ち込むことに。さらに表紙写真がありませんから,撮影したデータをPhotoshopに取り込み,ゆがみをとって色を調整してコピペします。

 それでも撮影忘れがあったりするので,次の機会に撮影するようにメモを残し,また実家で撮影してきます。これを何度か繰り返して,ようやく実家のデータも揃えることができました。

 Booksの面白いところは,このデータをWEBに置くことができることです。FLASHを使ったもので,表紙をブラウズしたり,検索を行ったり出来ます。生成されたデータをサーバーに置くだけですので,とても簡単にWEBベースで私の蔵書を公開出来るというわけです。

 他人に自慢するような蔵書ではないので,ここで公開することはしませんが,私自身は例えば会社で「あの本どこにあったかな」という疑問をその場で解決出来ますし,本屋さんでも同じ本を二度買うことを避けられます。

 でも,こんなことをしていたら,持ち物全部をデータベース化しないと気が済まなくなりそうで,なんか病的な自分が嫌になります。そうだ,電子部品の在庫データベースを作るってのはどうかなあ・・・

palmTXの電池が切れたとき

 PalmTXはあれから問題もなく,どんどん手に馴染んで普通に使える信頼性を維持しています。たいへんありがたいことです。

 あと,充電池が良く持つので,充電しないといけない,という感覚が希薄になってしまいます。連続駆動時間はそれほど長いと感じませんが,電源を切った状態での電池の持ちはなかなか良く,これはつまりスタンバイ電流が小さいのでしょうね。

 先日,ちょっとゲームで遊んで電池が減ったところに,1週間ほど充電をし忘れたのですが,そのせいで電池が切れてしまっていました。これまでの感覚だと「うわーやってもした」と一声上げて,メモリカードからバックアップを戻す作業をドキドキしながら行うことになるのですが,palmTXには不揮発メモリとNVFSがあります。

 充電を先に行って,ドキドキしながら電源を入れると,時計の設定画面が出てきてしまいます。まさにリセットがかかった状態なのですが,時計を設定すれば以前電源を切る前の状態にさっと戻ってくれました。

 いやー,ちょっと感激しました。確かに,このためにあのややこしいファイルシステムがあるのですから,正しく機能してくれないとこまります。でも,Palmの電池が切れたらデータも消える,に慣らされた頭には,半永久的にデータが残り続けるpalmには,さわやかな感動があります。

 これで電池が切れてもこわくありません。スタンドアロンで運用できるpalmというのはpalmではない,という気もしますが,すでにpalmがPCの処理能力に助けてもらって機能する必要はないくらいに高度な処理能力を自ら身につけている状況では,無理にPCと連携しなくてよいようにも思います。

 すでにPalmPreが大評判になって,webOSが次の世界を開くと言われる一方,当然palmTXは入手がほぼ出来なくなっています。私は本当に滑り込みで買った人ですが,本当に買って良かったと思います。

エアなリアル

 さて,遅まきながらラブプラスを,この連休に少し触ってみることにしました。以下はネタバレも含みますが,非常にぬるいものなので,何の参考にもならないものと確信していますが,「それはいわないで」という人は読まない方がよいかもしれません。

 友人は私が購入直後に始めましたが,友達モードから抜けきれず,いたずらに100日を過ごしてしまい,寂しくゲームオーバーとなりました。まあ1回目はそんなもんだろうと私も様子を見るつもりで始めてみます。

 若かりし頃,ときメモ(もちろんセガサターン版)をやり込んだ経験から言うと,八方美人的にすべてのキャラと成就するのは非現実で(そういえば顔を赤らめた状態を最大で何人まで維持することが出来るかというゲームシステムに対する挑戦を,全キャラ全イベント制覇に飽きたらず,さらなる高見を目指してやまない猛者どもが,命を削って日夜励んでおりました),特にラブプラスでは友達モードから恋人モードに移行するのに誰か一人にしないといけないわけですから,スタート時点で「この人!」と決めてかかるのがよろしいようです。

 ということで,私の場合は寧々さんにお願いすることにしましょう。部活,委員会を完全にさぼり,バイトだけに勤しみます。とても気立てのいい彼女が要求するレベルはそれほど高くなく,着々とイベントをこなしつつ,各パラメータを上げていきます。「よし闘いの勘を取り戻したぜ」とつぶやきながら,10年以上前に構築したシナプスの結合がじわじわと修復されていくのがわかります。

 そうこうしているうちに62日目にして晴れて恋人モードに移行。残念ながら全イベント制覇を目指したわけではないので,ギャラリーには空きが随分ありますが,最初から高望みをするのはやめておきましょう。

 私は攻略法もなにも知らず,調べもしないで始めてしまったので,スキップモードもリアルタイムモードも,細かい違いが分かっていません。が,リアルタイムモードを選べるほど暇な人ではないので,ここはスキップモードでいってみましょう。

 スキップモードは友達モードと同じ手順でゲームが進んでいくのですが,パラメータは「彼氏力」と名前を変えており,学生一般から彼女という非常に狭い評価基準に変更されることにより,学生としての本分を捨て去り,彼女のためだけにレベルアップをすることになります。

 ところが,この彼氏力の上がり方が尋常ではありません。1週間も普通に予定をこなすと,ほとんどのパラメータがMAXになり,ハートマークが複数つくようになります。この状態でデートなどしようものなら,もうベタベタすりすりされて(して)しまい,とても時間がかかってしまいます。私の場合,1回のデートをこなすのにゆうに1時間を超えるようになってしまいました。これはもう普通ではありません。

 デートの間,人目を気にする(ゲームの中でも現実世界でもですが)必要があったり,どんなスキンシップをするかちゃんと考えなければならなかったりと,なかなかの集中力が必要になります。うかつにビールでも飲みながらやってしまうと,つい反応が遅れて人目MAXでおかしな所を突っついてしまい,彼女に「触るな」と怒られてしまいます。この反応速度の悪化に,つくづく飲酒運転の危険性を痛感します。

 時間がかかるからと言ってデートに誘わないとみるみる機嫌が悪くなってしまいます。夜寝る前に「何してる」とメールをすると「・・・普通寝てるよ」とこれまた怒られる始末。それでも返事が来るだけましで,仕舞いには返事もこなくなります。寂しいものです。

 デートに誘いにくいもう1つの言い訳として,最初はデートスポットの選択肢があまりに少ないことがあります。しかも,ときメモと違い,スキップモードでも現実の日付に連動しますから,200日経過しても映画も演劇も全然内容が変わりません。これではさすがにデートに連れ出すのは無理でしょう。

 彼氏力を上げておくと,時に彼女からデートのお誘いを受けることがあります。この場合自分が選ぶことの出来ないデートスポットに誘ってくれるので,こちらとしても大変ありがたいのですが,必ず誘ってくれるというわけではありません。3週間も放っておくと彼氏力はどれもハート4つのMAXなのに,彼女は完全無視という現実なら破局になっていそうな状態に陥ります。

 ということで,どうやらスキップモードではあっという間に彼氏力が上がってしまい,週の前半にはデートの約束を取り付けることが可能となり,しかもデート本番の週末にはほとんどの彼氏力が高レベルに達します。これでデートに臨むと所構わずベタベタすりすりで30回以上のキスをする羽目になってしまい,実時間で1時間以上タッチパネルを突っつき回すという試練になってしまいます。いや,これはまさに麻薬かドーピングか,というところです。

 これはいかんとデートスポットの開拓を画策しますが,どうも一人でその場所を訪れると「スポットレベル」なるものが上昇し,5回ほど繰り返せばデートスポットとして選択出来るようになることが分かりました。google先生は恋の指南役です・・・

 平日は夕方まで学校で過ごし,夕方はバイトを入れて夜は外出しデートスポットの開拓と,まさの彼女のために頑張る毎日。1つデートスポットに出来ると新たな場所が現れ,またそこを開拓するために日夜一人で訪れる,毎日ラーメン屋に通い,毎日ライブハウスに通い,毎日三つ星レストランに通い,毎日ショッピングモールのアクセサリーショップに通い,毎日甘味屋に通い,毎日誰もない秋の海水浴場に通い詰め,多くの場所を開拓できました。

 日曜日は午前中にも外出出来ますから,夜に開いていない場所を訪れることが出来るのですが,デートに誘わず毎日曜日に開拓を続けていると偶然(でもないんでしょうが)彼女がそこにいたりして,帰宅後「彼女をほったらかしにして一人でお出かけとは何事か」とメールで怒られたりするわけです。

 このスポットレベルという概念ですが,冷静に考えてみるとなかなか理にかなったシステムです。彼女をデートに誘うのに,行ったことのない場所にいきなり行くなんてのは,相当リスクの大きなものです。だから何度も下見に出かけ,その結果デートに使えると判断して初めて,デートスポットになる,これは現実世界でも同じです。情報誌を読んだだけで分かったような気分になるのとは違い,自ら体験し,生きた知識として昇華されなければならないあたり,時代の変化を感じさせられます。なかなか素晴らしいと思います。

 また,不意に真面目な質問をされることもあります。アメリカの独立宣言の起草者は誰だとか,接客のスキルをなんというかとか,cats and dogsってなんの慣用表現かとか,注文を取るのに使っているハンディターミナルの正式名称はなんだとか,いろいろ試してくれるのですが,念のため私はズルをしてgoogle先生に確認してみることにしています。

 そんなこんなで季節は秋のまま,彼女の制服も夏服のままですが200日を越えて,すでにベテランカップルとなりましたが,まだまだ開拓済みのデートスポットは半分ほども訪れていませんし,これが実時間における冬,春,夏と1年も繰り返されるのかと思うと,気が遠くなると同時に,さぞやバグ出しは死ぬ思いだっただろうなと,心の中でスタッフに敬礼です。

 後で知ったのですが,公式ガイドブックは今月末の発売なのですね。ソフトの発売から約1ヶ月ほどしないと,公式な攻略法が出てこないというのもなかなかだなと思いましたが,その,彼女は高校三年生の秋という人生がかかった大事なときにデレデレデートなんぞしてて良いのか,と心配になりますし,プレイヤーだって高校二年生の秋ですから,そろそろ真面目に先の話を考えなければなりません。

 彼女は推薦狙いなのか,などと妙にリアルなことを思いついた敗北者たる友人の高い見識に膝を打ち,だとすれば春からのデートは女子大生の彼女とデートってなことになるのか・・・それはかなりうらやましすぎるが,そんなことで受験は大丈夫なのかと,すっかり目線は親御さんです。

 同じ問題は年下のキャラを選んだ場合はもちろん,同い年でも進路の話からは逃げられません。ときメモでは卒業ですべてが終了するようになっていたためそこは触れる必要もなかったのでしょうが,「告白されてからがスタートだ」というコンセプトのゲームにおいて,やはり先々の話に触れないわけにはいきません。そう,青春とは毎日楽しいことばかりではないのです。

 まず最初にに三つ星レストランで食事をし,ショッピングモールで買い物をして同じレストランでお茶して帰るという,さすが二人ともバイトに心血を注いでいるだけお金持ちだなと思わせるようなデートを毎週毎週繰り返すようになっているのですが,こういう高校生活もありだったのかもなあと遠く過ぎ去りし日々に思いをはせる一方で,正直なところ彼女のご両親に会わせる顔がない,という保護者モードになることもしばしばです。(だって彼女の家の前で人目MAXでベタベタすりすりってご近所でも評判になってしまうじゃないですか)

 ところでもう1つ,この話に触れないわけにはいきません。彼女が自分の好みにあわせて変化するという,アレです。

 彼女はなかなかナイスなタイミングでこちらの好みをきいてきます。髪は長い方がいいか短い方がいいか,髪の色は明るめがいいか黒がいいか,洋服はかわいいのがいいか清楚なのがいいか,好きな色は明るめがいいか暗めがいいか,そもそもの女性の好みはおとなしいのがいいか活発なのがいいか,と,いろいろ尋ねてきます。

 私としては自分の好みなどどうでもよくて,したいようにしてくれればそれで良いのですが,こういう場合に「なんでもいいよ」は最低最悪の返事だとこんな私でも知っていますので,一応好みを伝えます。

 一貫性がないことがどれほどマイナス要素になるかは分かりませんが,とりあえずここは初志貫徹。同じ事を聞かれても答えはぶれずに,いつも同じ答えで通します。もちろん変えた髪型や服装を「ばっちり」と褒めることも忘れません。

 結果彼女は,すっかり落ち着いたお嬢さんになってしまいました。近頃なんとなく制服が似合わなくなってきたように思います・・・本当にそれでいいのか?

 まだ始めてから1週間も経過していません。近いうちに公式ガイドブックも出ることですし,相変わらずgoogle先生は私の愚問にも優しく答えてくれるでしょうから,まだまだいろいろな仕掛けを楽しめるのではないでしょうか。

 もし週末にデートの約束がある状態でデータのセーブを行うと,デートをすっぽかしたことになるという,これまたリアルな縛りにおののき,しかしセーブせずに電源を切るとこれまたえらく怒られ,ついつい電源を消せずいる私は,「愛という窮屈をがむしゃらに抱きしめた」などという懐かしいフレーズを少しだけ思い出し,激しい自己嫌悪にさいなまれながら,明かりを消した部屋に浮かぶバックライト輝きに抱かれ,深い眠りに就くのです。

D-70の修理が終わりました・・・つらかったです

 D-70の修理がとうとう終わりました。怪我もしましたし,予備のキーまで接着剤が溶けていたという衝撃の事実まで突きつけられ,さらにフレキの破損や複数箇所のネジバカ,本体データの消失など,今回ほど手を焼いた修理もなかったのですが,とりあえず妥協できるレベルに来ました。

 キーは一箇所だけ反応の悪いものがあり,特にピアニシモで音の出方が違う事があるのですが,ここを深追いすると現状維持さえ難しいと判断し,このままとしました。とはいえ,,実用的には違和感は少なく,以前のような演奏中に不自然さを感じるようなことはありません。

 キーフレキの破損は本当に困った話だったのですが,先日書いたようにステンレスの板を両側で締め付け,バネのようにして接点を圧着する方式にしました。問題はこの締め上げのトルクで,微妙な調整が必要でした。調整後1週間ほど放置して馴染ませた後,塗料でネジロックをおこなってあります。

 底板をネジで締めて,ようやく完成してから演奏をしてみたのですが,かなり元の調子に戻ったのではないかと思います。いつもRD-700ばかり演奏していましたから,D-70の軽い鍵盤は結構演奏しやすく,また聞き慣れた音も心地よくて,なんだかんだで修理出来てよかったなあと実感しました。

 とはいえ,いつまで使えるのか分かりません。特にキーフレキの問題は正しい修理方法ではありませんのでいつおかしくなっても不思議ではありませんし,ネジバカになっている場所が多いという事は,それだけたわみに弱いということですから,バリッと物理的に壊れてしまうことも覚悟しないといけないでしょう。もう腫れ物状態,といえるでしょうね。

 演奏していて思ったのですが,1990年代前半という時代を色濃く反映した波形やプリセットがD-70の特徴でもあり,「これのどこがJupiter8だ」と今なら言われてしまうような音でも,アンサンブルでは結構馴染むので便利に使えたりします。

 オールラウンドに使えるシンセサイザーではないと思いますし,ユーザーインターフェースは未だに「これはおかしい」と思う仕様になっているのですが,広い鍵盤と特徴のある音は,やっぱり捨ててしまうのは惜しいです。

 名機とまではいいませんし,なにせ物理的に華奢でキーに欠陥があるシンセサイザーはプロの道具にはならないでしょうが,私は毎週毎週これを担いでスタジオに入っていたわけで,やっぱり私の原点なんだなあと,思いました。

D-70にファクトリープリセットが戻った

 昨日,少し時間が出来たので,D-70のファクトリープリセットの再現を試みました。

 D-70は,5キーを押しながら電源を入れると,内部のSRAMの状態をバルクデータとしてMIDI経由で出し入れすることが出来ます。

 海外の有志が随分昔に,工場出荷状態(といわれている)データを用意してくれていて,これを書き込めばよいのですが,問題はその書き込み方法です。

 幸い,SMFになっているものが見つかったので,シーケンサーで送り込めば良さそうな気もしますが,バッファ容量とか,大容量のバルクデータの送受信を想定していないソフトだと,案外うまくいかなかった経験があります。

 こういう時は,データの転送を想定したものを使うのがよいのですが,手軽なのはローランドがファームウェアのアップデートに使う目的で配布しているSMFの送信ソフトです。RD-700のファームウェアアップデートでも使った経験があるソフトで,どういうわけだか現在はリンクが切れていてダウンロード出来なくなっています。

 今回はこれを使う事にしました。

 MacBookProにUA-25をつなぎ,さらにUA-25とD-70をMIDIで繋ぎます。送信ソフトを起動するとMIDIインターフェースを選択出来るので,ここでUA-25を選びます。

 D-70を5キーを押しながら電源を入れ,データ受信モードを選択して,ENTERを押して受信状態にしてから,送信ソフトでデータを送信します。

 D-70の画面にデータの受信状態が表示されて,しばらくすると受信が終わります。EXITキーで受信モードを抜け,電源を再投入すると,あの見慣れた画面が出てきて一安心。

 鍵盤を押せばちゃんと音も出ます。しかし,いつもの起動画面がスキップされているので,ちょっと違和感があります。3キーを押しながら電源を入れると,いつもの起動画面に戻ってくれました。この点から考えると,本当の意味での工場出荷状態のデータというわけではないようです。

 しかし,気になったのはこの点だけです。いつもの場所にいつもの音色が配置され,いつもの音が出てくるようになりました。

 キーも一部反応の悪いキーがありますが,実用範囲なのでもうこれで終了としたいと思います。

 まだ組み上げたわけではないので完成というわけではありませんが,とりあえず危機は脱したと思います。つくづく,インターネットのありがたみを感じました。

 ということで,おまけ。D-70のキーデバイスの一覧です。

N80C196KB - CPU
SRM20256LC-12 - 8 x 32K SRAM
M5M4464AP-10 - 4 X 64K DRAM
LH5164DL-100 - 8 x 8K SRAM
PCM61P - 18-Bit Monolithic Audio DAC
M51953AL - Reset IC
PC910 - Opto Coupler
MB87419 - Custom PCM Chip
MB87420 - Custom PCM Chip
MB834000A-20-G-3B1 MASK ROM - PCM Wave A 4Mbit
MB834000A-20-G-3B2 MASK ROM - PCM Wave B 4Mbit
HN62304BPE98 MASK ROM - PCM Wave C 4Mbit
HN62304BPH57 MASK ROM - PCM Wave D 4Mbit
HN62304BPH58 MASK ROM - PCM Wave E 4Mbit
HN62304BPH59 MASK ROM - PCM Wave F 4Mbit
SSC1000 - Gate Array (key scan)
TC23SC140AF-007 - Custom FX Chip
MB87424 - TVF Chip
SLA7160FIC - Gate Array
uPD65005G-062 - GateArray (IC card)
HG61H15B72FS - Gate Array (input/output)
AM27C512-125DC Eprom A 512kbit
AM27C512-125DC Eprom B 512kbit

 CPUはインテルの組み込み用マイクロコントローラである80C196です。私はMCS-96シリーズは良くわからんのですが,一応16bitのCPUで,ひところのIBM製のHDDなんかによく使われました。D-20やW-30なんかには8097が使われているようです。

 汎用のCMOS-SRAMやDRAMはさすがに当時強かった日本製が使われていますね。DRAMなんか三菱製です。

 PCM61は18bitのDACです。これも当時はよく見ました。JD-800でも使われていますね。

 MB87419とMB87420はカスタムICなので詳細はわかりませんが,PCMを処理する「音源チップ」なんでしょうね。そのPCMは4MbitのマスクROM6個に格納されており,全部でトータル3MByteという大容量!です。JD-800との比較ですが,実は全く同じ容量だったりします。

SSC1000はキースキャン用のIC,TC23SC140はエフェクタ用のICですが,どっちもカスタムなのでよくわかりません。MB87424はTVFとありますが,D-70はRS-PCMキーボードであるU-20の系統のシンセサイザーですが,U-20やU-220との違いはTVFがあるかないかでした。開発中はU-50と呼ばれたD-70が,U-20にTVFチップであるMB87424を搭載して生まれたというストーリーは,なかなか辻褄が合っているように思います。なお,このMB87424,SSC1000は,JD-800にも使われているようです。

 SLA7160もuPD65005G-062もHG61H15B72もゲートアレイで,詳細はわかりません。ですが,uPD65005G-062はD-20やD-50に使われているようですし,HG61H15B72についてもD-20やU-20なんかには使われているゲートアレイなんじゃないでしょうか(確認したわけではありませんが)。

 これらの回路図を手に入れるのは難しいものですが,もし手に入ったらきっと楽しいと思います。回路図こそ,設計者の意志が投影されたものですし,回路図上の変化から時間軸上の変化,変遷が見えてきます。

 というわけで,私は回路図を酒の肴にたしなむ人です。

D-70,苦難の道

 左手の中指の先端を,もう少しで切り落としてしまうところだったD-70の修理作業ですが,ようやく傷も癒えてきたので,再開することにしました。

 ベロシティのおかしいキーがある,その原因はキー自身にあった,よって新品に交換すると直るはず,というのが前回までのあらすじだったわけですが,接着剤の溶け出し対策を自分行った交換用の黒鍵が用意できたこともあり,さくっと交換,組み立てて終わりにしようと考えました。

 ・・・甘かったです。まさかここまではまるとは。

 意気揚々とキーボードを組み立てて,自信満々でテストをしてみると,ある特定のキーで音が出ません。どうしてだろうとキーを外して,ゴム接点を直接押してみると先に接触する接点が反応していないようです。

 以前も書きましたが,D-70の場合はキーベロシティを検出するのに,1つのキーの中に2つの接点を仕込んだゴムキーを使います。2つの接点は順番に接触するように作られていて,1つ目が接触してから2つめが接触するまでの時間を計れば,ベロシティが測定出来るという仕組みです。

 1つめの接点だけを接触させれば最低の,1つめと2つめを同時に押せば最高のベロシティが計測されるわけですが,今回問題となったキーは,1つめの接点を押しても音が出ません。2つめの接点を押せばベロシティ最強で音が出ます。

 以前の修理で,溶けた接着剤がキーボードのフレキシブル基板を溶かしまい,ある1つのキーで同様の症状が出たことがありました。この時はさすがにあきらめそうになったのですが,結局面実装のダイオードに被せてあった樹脂をほじくって,ダイオードの足に直接ハンダを付け,リード線で中継基板に持ってくるという無茶っぷりで修理をしました。

 同じ話だろうと,今回も該当するキーのダイオードの足までほじくり,リード線をハンダ付けします。

 思えばこれが失敗の原因だったのですが,どこが接触不良を起こしているかをちゃんと確認しないでこんな後戻りできない処置を行うのは,本当に無謀です。

 確かに問題のキーは直りました。しかし,他のキーにも同様の問題が出ていることがわかったのです。同じように片っ端からほじくって直していきます。確かに端っこから8つまでのキーは,完璧になりました。しかし,9つめのキーから,また音が出ていないものが現れます。

 キーは8つごとにまとめられており,キーマトリクスを構成しています。前回の故障はキーフレキの故障によるキー単独の不良でしたが,今回は8つごとですので,キーから後ろ,中継基板までの間で起こっていることになります。

 しかも悪いことに,ほじくって熱をかけたダイオードは,フレキとの接触を維持できていない上,パターンも切断されている箇所があります。本当に余計なことをしてしまったわけです。

 では原因はどこだと見てみると,キーフレキと中継基板を繋ぐ,コネクタが付いた別のフレキがあやしいようです。このフレキとキーフレキとは,透明なプラスチックで押さえて接触させてあるように見えたので,指でぐいぐい押して,接触を確保しようとします。

 ところが悪化。8連続で音が出ないゾーンが出来るなど,余計に接触が悪くなったようです。

 単純な接触なら,アルコールで掃除すると復活するので,この部分を分解してみることにしたのですが,ペリペリという何かが剥がれたような音がします。

 接点をよく見ると,黒いカーボンの塗料が剥がれて,銀のパターンがあらわになっています。どうやら,黒いカーボンを導電性の接着剤にして,2つのフレキを電気的・物理的に接合してあったようです。

 剥がれてしまったものは,もう元には戻せません。かといって手元に導電性の接着剤などありませんから,なにか他の方法を考えねば・・・安易な検討が招いた結果に動揺しつつ,必死に対策を考えます。

 考えた方法は,中継基板用に向かうフレキのパターンに合わせた形で銅箔テープを貼り,これをキーフレキの接点に圧着するという方法です。銅箔テープを使えばそこにハンダ付けが出来ますので,私の得意技を封じることは出来ません。

 問題は圧着です。幅が5cm程,全部で16の端子がある接点をきっちり押さえ込むのは難しいのですが,0.8mmのステンレスの板を弓のように湾曲させ,これを押し当てるように両端をビス留めします。

 うまく締め付けトルクを調整しないと,均等に力がかからないので調整が難しいのと,調整後はダブルナットでゆるみを防止する必要もあるでしょう。

 この方法で仮組みしてテストをしますと,一応音は出るようになったみたいです。しかし,ダイオードの足をほじくってハンダ付けを行ったときにパターンを壊したみたいで,8つおきに音のでないキーが3つほどありました。これはもうあきらめて,すべてのダイオードの足をほじくってハンダ付けします。これでテストをすると,一応全部のキーの音が出ています。よかった。

 嬉々としてキーボードユニットを本体に組み付けてみますが,ここでテストをすると,最低音域の8つと,そこから2オクターブ行ったところの8つのキーのベロシティが最強になっています。

 しかも,どういうわけだか作業中にSRAMの内容がぶっ飛んだらしく,電源を入れると「No RAM Card! 」とメッセージが出てきます。EXITボタンを連打して通常の画面が出てくると,文字化けの嵐です。メモリも消え去ってしまいました。

 いやー,本当にがっかりです。この時すでに夜の11時。もうがっくりと力が抜けてしまいました。これまでの8時間は一体何だったのか・・・フレキの破損はモグラ叩きで,1つ直せば次がまた壊れる,こんなことを繰り返していても,もう絶対に直せない・・・その上メモリまで消えるとは。

 もう修理はあきらめて,寿命が尽きたとして捨ててしまうかと思いました。

 しかし,いかにデジタルくさい音とはいえ,個性の強い音を持つD-70です。ベルやチャイム系,パッド系,そしてJupiter8を模したとされるストリングスの音は,ちょっと手放すのが惜しい,私の原点です。

 寝る前に,メモリの初期化だけやってみようと,8キーを押しながら電源を入れます。初期化するかと聞かれたので「本当にサヨウナラだな」と思いながらENTERキーを押すと,いつもの起動画面が出てきました。

 しかし,完全初期化されたため,すべてのパッチやトーンが消えています。そればかりか,システム系の設定も全滅で,全く音が出てきません。

 デモプレイの音は出るので,オーディオ系は大丈夫ですが,とにかくキーを押して音が出るようにならないと話になりません。

 RAMカードを差し込んでみると,自分の作った音は再現できそうです。しかし相変わらず音は出ません。システム設定を見てみると,ローカルオフになっていたことが判明,これをオンにすることで,とりあえず音が出るようになりました。

 しかし,今度は最低音域で音が出なくなっています。もちろん2オクターブ上の8つは最強で出てくる事に変わりはありません。

 そこで,キーフレキを押さえているステンレスのバネ圧を調整するため,ビスを回してみます。最低音域で音が出るようにすると,なんとベロシティが有効になっています。気をよくしてもう少し調整すると,今度は全部のキーでベロシティが有効になりました。

 しかし微妙な調整です。少し緩んでも締めても誤動作します。こんな信頼性の低い状態ではどうにもならないなあと思いつつ,それでも一時的とはいえ全システムが正常になったということは,頑張ればここまで到達できるというゴールが見えたことと同じです。

 なんだかうれしくて,涙が出そうになりました。

 立てかけてあったD-70を床に置いて,RAMカードに入れてある自作のストリングスやエレピを少し弾いてみました。うん,違和感はありません。狙ったベロシティで音が出てきます。なんと心地よいことか。

 解決しないと行けない問題は,まずファクトリープリセットの再現です。私はD-70は,自分でいじった音はRAMカードに入れてあり,基本的にプリセットの編集を直接行う事はしませんでした。

 一部うっかり上書きしたものとかありますが,ファクトリープリセットを戻すことがとにかく先決です。これについては,海外のサイトに初期状態に戻すデータを見つけました。システムエクスクルーシブメッセージで送信するのですが,MIDIシーケンサーから用意しないといけないので,ちょっと手間がかかりそうです。

 キーの問題は,時間が経過するとステンレスのバネも馴染んでくるでしょうから,その段階でもう一度調整を行ってネジロックをし,組み上げようとおもいます。

 はっきりいって,もうライブには持ち出せません。こんな信頼性の低い機器を使うのは恐ろしいくらいですが,購入から5年間は毎日毎日弾き,毎週のようにスタジオに持ち出した相棒ですから,簡単に捨ててしまうのも心が痛みます。

 いっそのこと内部の基板を2Uのケースに入れてラックマウントにすることも考えましたが,やっぱり鍵盤があってのD-70ですから,やれるところまで頑張ってみる事にします。

 参考までに,キーのウェイトを固定する接着剤が溶け出す大問題は,D-70/VK-1000/JV-80/JV-1000/U-20/JD-800で発生するそうです。対策品は接着剤が黒色で,ピンク色のものは未対策です。なんか,結構高価なキーボードが多く含まれているように思えるのですが・・・

 ローランドはこの問題を修理対応で処理したようで,修理に出すと部品代は無料,技術料の1万円弱で交換されたようです。私も知っていればそうしたのですが,何万円もかけて修理するのは中古の価格の方が安いという話から躊躇し,修理でまさか対策品になるとは思ってなかったこと,それに接着剤が溶けるだけならなんとか自分で出来るだろうと思ったことで,もう修理に出せない状況になってしまいました。

 板バネを使ったキーもいまいち感触が悪く,D-70の不満な点でしたが,同じ構造はJD-800でも使われており,JD-800があっという間に世の中から消えた事も頷けます。

 私のD-70は,すでに5,6箇所のタッピングビスがなめています。特にキーの横にあるプラスチックの部品に立ててあるボスなどは完全に割れていて,ビスがほとんどとまりません。

 ただでさえ76鍵という長い鍵盤ですから,ねじりにも弱いはずで,こうした強度不足は実に不安です。それに内部の部品も劣化が進み,あらゆる部分が危うい状況です。

 満身創痍とはまさにこのこと。もうあちこちから悲鳴が聞こえるD-70を見ていると,もっと長持ちして欲しいなあと心から思います。

 実は,私が気に入って使っている学習リモコンも,フレキが壊れて使い物にならなくなりました。D-70もフレキのトラブルでこんな状態です。フレキはほぼカスタム品ですから,壊れていても汎用品に交換出来ません。修理はハンダ付けが出来ないので実質的に不可能です。

 こんな危ういものが,案外寿命が短く,簡単に壊れてしまいます。同じように故障すると手が出せないものに半導体がありますが,半導体は滅多に壊れませんから,簡単に壊れてしまうフレキとは別次元です。

 MiniMoogは30年でも生き続けますが,おそらく80年代後半から90年代のシンセサイザーは,10年くらいでだめになるでしょう。それが果たして楽器と呼べるのか。シンセサイザーがようやく「楽器」として認められた世の中にあって,新しいシンセサイザーほど作り手側が楽器として扱っていないんじゃないのかと,そんな風に感じました。

 
 

DxVAによる動画再生のハードウェア支援

 先日,GeForce6200Aのグラフィックボードを買ってはみたものの,地デジ視聴時のあまりのコマ落ちに使用を断念,その後ドライバを古いものにすることでなんとか実用レベルに引き上げた話を書きました。

 この話,その後もぼちぼち調べてみると,技術的にもなかなか興味深いお話が分かってきました。まず,動画再生のような重たい処理は,ハードウェアの支援があった方が合理的なわけですが,それをGPUがちゃんと果たしているという事実です。

 実のところ,この手の「ハードウェアによる支援」というのは案外眉唾なイメージが私にはあって,確かに積和演算を専用ハードウェアで行うのは合理的でも,結局上位のアプリケーションからハードウェアに到達するまでにドライバだのラッパーだのHALだのといろんなソフトウェアが間に挟まって,結局軽くならないという馬鹿馬鹿しい事を何度も見せつけられてきました。

 だから,それらオーバーヘッドを少なくする工夫をすることと,オーバーヘッドがあっても全然得をするくらい高速な演算器を用意することが,成功の鍵だと思っているわけです。そう考えると,3DグラフィックにGPUを用いることが当たり前になった事実は,非常にわかりやすい成功例と言えるのかも知れません。

 同じ話を動画再生にもという話な訳ですが,動画再生は高速なCPUを使ってもどうにかなる世界ですから,GPUがないとどうにもならない3Dグラフィックとは,必要度が違ってくるように思います。ですから,私はGPUによる動画再生の支援などは,セールストークの1つだと考えていました。

 しかしこの考えは甘かったです。

 結論からいいますと,これまでCPU負荷が40から50%程度だったものが,20%前半から30%前半程度と,一気に半減しました。さらに負荷の変動も小さく,安定したものとなっています。結果,コマ落ちはほとんどなくなり,実に快適に地デジ視聴が可能になりました。すごいです。

 なにをしたかと言いますと,MPEGデコーダの設定を,DxVAを使用する設定に変更しました。レンダラはVMR7を選んでいます。VMR9だとコマ落ちがひどいです。

 WindowsXPですから,DxVAが必須ではありませんし,メモリ消費が増えてしまったり速度が低下することもあるということで,私は使わずに使っていました。また,この設定が有効になるのが,TVTestの再起動によることを知らず,ONとOFFで差がないと簡単にあきらめてしまったことも失敗でした。

 GeForce6200AにはPureVideoという動画支援が実装されています。世代が古いので大したことは出来ませんが,これを使うにはDxVAでなくてはならないです。DxVAを使わずにVMR7を使うと,DirectDrawが利用されるので,ここの速度が低下する最新のドライバでは盛大なコマ落ちが起こるということでしょう。

 DxVAでは,MPEGデコードをGeForce6200Aとドライバが行うようで,デコード時の色相の設定は,MPEGデコーダの設定から行わず,nVidiaのドライバから行うようになります。

 やったことはこれだけです。こういうことなら,もしかするとドライバを最新にすると,さらに軽くなったり,さらに画質が向上したり,さらにMPEGデコード時の調整項目が増えたりするのではないかと思うのですが,ドライバ周りをいじくるのもしんどいので,もうこれでよいことにします。

 歴史的経緯の把握も必要な,Windowsのグラフィック周りの技術的なお話は,それらと無縁な生活を送ってきた私には,相当ハードルの高いお話です。ですのでこの理解が正しい自信もありませんし,もっと良い設定があるのかも知れません。

 ただ,大変面白いのは,やはりGPUをおごったことは正解だったということです。期待以上の性能向上が得られ,実際にそれがこれまで不可能だったことを可能にしてくれています。PCIという前世紀のバスに繋いでもこれだけの恩恵が受けられるというのは,すごいものだと感心しました。

 理屈はともかく,オンボードのアナログRGBでは得られなかった快適な視聴環境がようやく手に入りました。地デジ専用PCとして,妥協するべきところがもうなにもなくなった気がします。目的を達成できて,実に爽快です。

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